これはただの悪い夢
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連載:これはただの悪い夢
※アンダーフェルの独自解釈有ります。(このサイトのアンダーフェルのAlphyneについてはこちらを参照)
※パラレルワールドの自分を夢で体験するという設定です。
「お願いだ、アルフィー」
「ダメだって言ってるでしょ」
「我慢できない」
アンダインがそう言うと、頬をぺちんと叩かれる。叩いた本人 ー アルフィーは強めに叩いたつもりだろうが、叩かれた方は痛みをそんなに感じなかった。それよりもアンダインにとって違和感なのは、これが夢だと自覚していることだ。ここがラボのアルフィーの私室の、さらにベッドの上だということにも当惑する。アルフィーにしては悪趣味なレイアウトの室内も気になるが、ここがアルフィーの私室だということを、自分は何故か知っている。
好きな女の子の部屋の寝具で彼女に迫って、自分は何を言っているんだ。
(……けしからん!!)
アンダインは不思議な気持ちでその光景を自分の目から見ていた。自分であって自分でない。思った通りに体は動かず、自分の意思と無関係に勝手に動いてアルフィーの身体に手を伸ばしている。繊細な彼女を驚かせて嫌われたらどうするのかと、自分の行動に対してハラハラした。
しかし、アルフィーもアルフィーで怯えを見せず、嫌がる素振りをしながらも積極的な様子だった。
「そこは嫌!」
とハッキリ言ったかと思えば
「学習してよ」
とアンダインの手を取って自分の良いところへ誘導する。それはアンダインにとって魅惑的すぎた。夢の中の自分も、そこはリンクしたように一緒に興奮する。
「可愛い女王様……!」
確かに可愛い。可愛すぎる。だが、ちょっと待て。自分もおかしければアルフィーもおかしい。思い当たることのないシーンや思い通りにいかない身体が見せる映像はさながら映画でも見せられているよう。しかし、匂いや感触に妙にリアリティーを感じて、アンダインはまた混乱した。
たまらず黄色い乳房に噛みつくと、額をひっぱたかれる。
「ムードの一つも作れないなんて」
そういって睨むアルフィーの、そんな表情は見たことが無かったので一瞬見惚れてしまう。彼女はどんな顔も可愛いなと魚人は目を細めた。
あまりにも都合の良い夢過ぎる。
(そうか!夢だ!)
そう叫ぼうとした瞬間、目が覚めた。
「あッ!?」
ベッドから飛び起きる。今度は思い通りに動く身体。見慣れた私室。自分は夢を見ていたのだ。
「なん…て破廉恥な……!!」
と口にして自分を叱咤してみたが、あのまま夢に気付かなければ、アルフィーともっと甘い時間を過ごしていられたのだろうか、などと考えてしまう。
いや、いや、とアンダインは首を振った。
「ッ、所詮夢だ」
そう口にして、頭を抱えた。彼女に片思いするばかりに、いかがわしい夢を見るとは。情けなさと羞恥心でアンダインはしばらくベッドサイドで蹲った。
「ああ、ごめん、アルフィー!!」
夢とはいえ彼女の体を好き勝手撫でまわした罪悪感と、リアルなアルフィーの肉感を思い出して、夢で彼女にされたように自分の顔を引っ叩いた。夢よりずいぶん痛い。アンダインは再度ベッドに潜り込み、忘れてしまおうと目を閉じた。けれど目蓋の裏に夢の中のアルフィーの暖かい匂いや官能的な柔らかさ、甘い声、言葉とは対照的な誘う視線を思い出し、それはアンダインを何度も翻弄した。
◇
アルフィーが夢を見るときは大抵悪夢だったが、今日は違った。気付くと、大きな影に覆い被さられていて一瞬戦くが、それが見知った友人の魚人だとわかると、恐怖よりも戸惑いが勝った。それなのに、自分は安心しても居て、相反する気分にまた困惑する。
一糸纏わぬ自分の身体に魚人がキスやら頬擦りやら愛撫をしているのを、ぼんやり見ている自分が信じられないでいた。
(な、な、なッ!?)
「間違っても牙なんか立てないでよ」
思ってもいないことが口から出てくる。
「そんなことしない……!」
切羽詰まったようなアンダインの声は甘い色が混じっていて、うっかりソウルが飛び上がった。
「ここ? ねえ、アルフィー。気持ちいい?」
「一々聞かないで……アッ」
「可愛い声!」
性感帯を撫でられて、気持ち良さに声が漏れる。自分よりも興奮した様子の魚人がそこを何度も撫でてくるので、アルフィーは初めての感覚に意識を飛ばしそうになった。だが、アンダインが自分の太ももに嚙みついたので、ぴりっと痛みが走って意識を取り戻す。彼女の牙が肌に当たった程度の甘噛みは、そんなに痛くは無かったが、自分の手が勝手にアンダインの額を叩いた。
「下手くそ!」
「ごめん。痛かったか?」
「馬鹿! 離してよ!」
なぜこんなに自分は怒っているのだろう。でも、分かるのは、口では怒っていても内心は嬉しくてたまらないということだった。困ったアンダインの顔を見ることに快感すら覚えている。
一体なぜこんなことになっているのだろうか。いつ、彼女とベッドに入ってこんな危ないまぐあいをしているのだろうか。新しいプレイかなにかか? 知らない間にセフレにでもなってしまったのだろうか、自分たちは。
「嫌だ。許して」
眉を寄せるアンダインが顔を近づけてくる。アルフィーはそれを哀れに思ったが、彼女を慰める言葉が出てこない。ふん、と鼻を鳴らして顔を背けた。
(私、どうしてそんな態度取ってるの!? なんでアンダインをいじめるの!?)
「今日はもうおしまい」
(な、何が!?)
「そんな」
アンダインに抱きすくめられて、アルフィーは身動きがとれない中、精一杯暴れた。分かっていたが、大きなアンダインから逃れることは出来なかった。口惜しさと、嬉しさとで自分の感情がとっちらかっている。
「大嫌い。あんたなんか」
「好きだ。アルフィー」
「私の話しなんか、聞かないくせに!」
「ちゃんと聞くぞ」
「離せって言ってんのよ!」
「それは嫌」
「くそ! 嫌い! 死ね!」
(もう、やめてよ!)
酷い言葉が次から次へと自分の口から出ていく。それなのに、アンダインは困った顔をするだけで、どうともない様子だった。
「アルフィー、愛してる。死んでやれないけど、お前のためなら誰だって殺してやるぞ」
英雄らしからぬセリフに驚くと、今度は自分の脳内で、哀し気な思考が過ぎ去った。
(じゃあ、私を殺してよ)
「え……っ」
目を覚ますと、そこはいつものラボの私室だった。アルフィーはしばらく放心した後、夢の内容を思い出して恥ずかしさに布団を被った。アンダインに憧れるあまり、頭がおかしくなって変な夢を見たのだ。そうだ。最近アンダインと顔を合わせることが多くなったせいだ。有名な英雄が友人に会いに来るようにラボに顔を見せるようになって、自分は勘違いしているんだと、アルフィーは自分に言い聞かせた。それにしても、明日からどんな顔をして彼女に会えばいいのかわからない。きっと明日もアンダインは見回り(と称して)のために自分に会いに来るのだから。
身体を這う青い手の硬さや、熱い息遣い、強い抱擁、彼女の体から香る海の匂いすら思い出せる。罪悪感から溢れた涙で視界が歪んだ。
◇
パピルスはアンダイン目の下にできた隈を見つけて珍しそうに瞬きした。
アンダインは昨晩の夢のような(いや、夢だったのだけれど)愛する彼女とよろしくやっている気持ちの良い夢を見て目を覚まし、もう一度ベッドに入ったまでは良かった。その後、幸か不幸か、夢の続きを見てしまったので、今朝から寝た気がしなかった。
夢のアルフィーはこちらを散々罵り、暴れ、睨んでいたのに、自分は問答無用に彼女を組みぬいていた。最悪だ。自分が二人いるような気分だった。もう一人の自分が考えていることはアルフィーを手に入れることで、アルフィーの愛がこちらに向くまで絶対に諦めないという強い決意だった。それは今の自分にも当てはまる気持ちで、アンダインは自分に腹立たしくなる。客観的に自分の恋心を見ればあんなものなのだろう。
だが、夢の中のアルフィーの魅力はそう思わせる力があった、とそんな言い訳が浮かんだ。
「可愛かったな……」
呟いて、自分の頬を殴る。パピルスの無垢な視線が痛い。
あれはアルフィーそっくりの別のモンスターだった。自分の夢が見せた幻だ。
「ちょっと、アンダイン、どうしたの」
「何でもないッ!!」
パピルスがパスタを啜りながらアンダインの赤くなった片頬を見つめる。髑髏の黒い深淵の瞳に、恥ずかしい自分の夢が見透かされやしないかとアンダインは焦った。
昨晩見た夢のアルフィーは確かにアルフィーだったし、いつも通り可愛かったのだが、しかし、やはり言動や雰囲気がだいぶ違っていた。別に気の強い女性が特別タイプだというわけではないのに、あんな夢を見るなんてどういうことだろう。とはいえ、どんな性格でもそれがアルフィーだと思うと途端に愛しいと思うから厄介だ。
「あれは違う、アルフィーじゃなかった」
そう思うしか心を鎮めることは無理そうだった。
「もう、何ブツブツ言ってんの。オレのパスタ、不味かった?」
「え!? あ、いや……前回より美味い」
とは言ったものの、「前回より」と言う言葉を入れなければ、ハッキリ言って不味い。しかし、自分が作ってもレベルは一緒だろう。
パピルスはアンダインの言葉に満足気に笑い、それからテーブルの端に積み上がった書きかけの手紙の束に目をやった。アンダインは相変わらずアルフィーへ手紙を出そうと試みては失敗しているらしい。
「そういえばさっきアルフィー博士が」
パピルスの口からアルフィーの名前が出たのでアンダインはパスタを喉に詰まらせそうになった。
「アンダーネットで荒れてたんだよね」
何とかパスタを飲み込んで、アンダインは水を飲む。
「荒れてたって?」
パピルスがスマートフォンの画面を見せた。アンダインはアンダーネットのアカウントを持っていたが、投稿はそんなにしていないし、SNSは使い慣れていなかったので、アルフィーと現実では友人関係にあれど相互フォローはしていない。
ゴミ箱にキラキラしたエフェクトが入ったアイコンで連投された投稿がタイムラインに表示されていた。
[ 恥ずかしい夢見ちゃった~~~~!💦><もう最低! ]
[ 皆だってたまにはえっちな夢ぐらい見るよね。そうだよ。私だけじゃないよね。 ]
[ あ~~~~~~忘れたい!! ]
[ みゅうみゅうのAKIBA限定スペシャルボックスフィギュア眺めて落ち着こう。オヤスミみんな ]
パピルスはけらけら笑っているが、アンダインの顔はさらに青くなった。
(まさか!? ……そうだ、あれは夢だった!)
自分が見たのも「えっちな夢」だ。現実だったのだろうか? 夢遊病者のように、アルフィーを襲いに行ってしまった? アンダインはすぐ首を振る。
そんなことは非現実的だし無いだろう、が、もし偶然にも、アルフィーが同じ夢を見ていたのなら……。アルフィーから軽蔑の目で見られてもおかしくない。アルフィーの呟きの投稿時間が昨晩自分が夢を見た時刻と同じ時間帯であったのも不安になる。
(アルフィー! あれは私じゃないんだ!)
意味が有るのか無いのかわからない弁解の言葉は、アンダインの喉の奥で潰れていった。
◇
静かなウォーターフェルの、さらにモンスターが寄り付かない荒涼なゴミ捨て場。アンダインは気分転換にそこへ足を運んだ。すると、ゴミの山の一角に放置されたソファに座り込んでいる白衣の姿を見かけ、思わず声を上げる。
「あ」
アルフィーは声のする方へ顔を向けて、友人の姿を目に止めると「あっ」と同じように声を漏らしながら慌てて顔を背けた。アルフィーが顔を逸らすのは別段珍しいことではないが、今日のそれはアンダインには引っ掛かった。気にしていない体を装って、話かける。
「奇遇だな! 会いたかったぞ!」
「えっ、あ、うん、わ、私も……っ」
数秒の沈黙。普段アンダインから話題を振ることが多いが、こんな時に限って思考が別のことに奪われ、所謂「世間話」が出てこない。アルフィーの座っているソファに自分も腰かけた。魚人は笑顔を装ったが、水に映ったのは不気味に牙を見せた自分の顔だった。
「今日も可愛いな」
と、言い慣れた台詞が口をつく。
アルフィーは昨晩の夢の中で何度も自分の耳元で呟かれた言葉を思い出してしまい、赤くなった。
一 可愛い女王様
その時のアンダインの甘い声と言ったら、現実では聞いたことが無い。アルフィーは慌てて赤くなった顔を隠そうと、両手で眼鏡を直す仕草をした。
「えっ!あっ、あ、そ……」
騎士隊長様のいつもの社交辞令だ。と頭で自分に言い聞かせる。
「変な夢でも見たのか」
「な、なんで知ってるの!?」
「SNS見た」
アルフィーは眼鏡を掴んだまま顔を隠した。なんでもかんでもSNSに呟く癖は治すべきだろうと反省する。口に出すのが苦手な分、文章にして吐きがちだ。
「え、と、その、や、別に、大した事じゃなくて」
「そうか」
同じ夢を見ている筈がない。そう頭では分かっていても、アンダインの口元は悪い予感に無意識に歪んでいった。暑くも無いのに汗が流れる。
「夢の中で、誰かに何かされた? それで、落ち込んでるのか?」
「ぇ!」
「もしかして、それ私?」
「ひッ……!? な、なんで!?」
「……今日は余所余所しいから」
「そ、そうかな……っ」
アルフィーの反応を見るに、同じ夢かはともかく、彼女の夢の中で自分は粗相をしたのだろうと、アンダインは察する。それも「えっちな」事を。
「私が何かしたなら、ごめん」
「な、な、何で、私の夢のことで謝るの?」
確かにおかしな話だが、アンダインは昨晩の夢の自分が相手にひどいことをしていながら、少なからずリアルの自分がそれを望んでいたことに罪悪感を抱いていた。つい、謝罪が口をついて出てきてしまう。
「あー……。その、私が普段、アルフィーに振る舞ってることが、夢に出たかもしれないだろ」
「そ、そ、そんなことない! アンダインはいつも優しいし、夢だって、私が悪かったの! アンダインのこと、いじめてた……!」
「別にいじめられてなかったけど」
二人は足元の流れる水を見つめていた、口にしたことをお互い反復し、水越しに見つめ合う。水面に歪んだ相手が気まずそうにしているのを其々気まずい気持ちで見ていた。
アンダインは顔を上げてアルフィーに直接視線を投げた。
「たッ……たまたま私も昨夜、お前の夢を見たんだ」
「そ、そうなんだ……?」
まさか、同じ夢の筈がない。そう思うのに、二人は確信めいた嫌な予感を抱く。
「夢の私は、性格悪かったでしょ……?」
「そうだったかな」
「あなたに、き……嫌いとか、死ね……とか、言わなかった?」
「あれは私が悪かったし……」
「……」
(同じ夢の筈がないッ)
(そうだったら私…っ)
「夢だよね……」
「……夢、だ」
「たまたま、似た夢を見たんだよね」
「きっと、そうだな」
アンダインは、いつも直視しているアルフィーの表情を、この時ばかりは横目に確認する。メガネの奥の小さい瞳が困ったように潤んでいた。夢のことを謝るのはおかしいが、それでも謝りたかった。
先に謝罪を口にしたのはアルフィーだった。
「……ご、ごめん、ね……。あれ、う、嘘だよ」
「えっ」
「あ、べべ、別にその、私じゃなくて、夢の中の私は、アンダインのこと、好きだった、み、みたいだよ……!」
言われてつい、夢で見たことを思い出す。あの誘惑的な視線はアルフィーの好意の表れだったのだろうか? しかし、アンダインは首を振った。夢の中のアルフィーに似た別のモンスターから好意を寄せられても仕方がない。欲しいのは現実の彼女だ。
「アルフィーは?」
「わ、私?」
「私の事、嫌いになった?」
「そんなことないよ!」
アンダインは胸を撫でおろした。いつか、この可愛らしいトカゲに愛の告白をして、もしも自分の気持ちを受け入れてもらえたなら、昨晩以上の甘い魂のやり取りをするのだ。けれどもそれは、臆病なアルフィーの警戒を解いて、親しくなって、悪い虫を追い払って(そんなもの居ないのだけれども、念のため)それからなのだ。アルフィーに対して随分慎重だなと、自分で思う。
(臆病者め)
そう聞こえた気がしたが、一旦はそれを無視した。
◇
アンダインは目を覚ました。腕の中で眠る可愛い女王様の寝顔を覗き込む。夢の中で、歯痒いことに自分はまだアルフィーをものにしておらず、毎晩の彼女とのまぐあいを夢だと勘違いしているようだった。意気地の無い自分の体が言うことを聞かないことにいら立ちを募らせていた。
(どうした。馬鹿。彼女に迫って告白しろ。断られても関係ないだろ! 無理矢理奪えばいつか私のものになる!)
それなのに、夢の中の自分はアルフィーの言葉や気持ちを優先して随分女々しく接していた。甘っちょろい自分の態度に背筋に悪寒が走る。
アルフィーが欲しいなら周りのモンスターなんか全部殺してしまえばいい。自分だけを選択するように仕向けるんだ。泣くか睨むか叫んで怒るか、アルフィーの気持ちが一時的に荒れたって、腕の中に閉じ込めて大事にしてやればいずれ大人しくなるだろう。彼女からの罵詈雑言なら幾らでも甘んじで受けるし、引っ掻かれても痛くも痒くもない。毒も効かない。睨まれても、ああ、女王様は可愛いだけなのだから。
「臆病者め」
夢の中の自分に唾を吐いて目を覚ますと、腕の中のアルフィーももぞりと動き出した。
「起きたの?ハニー?」
「離してよ。お風呂に入りたい」
「ピロ―トークしてから」
「あんたが粋なトークできるわけ?」
手厳しい言葉にゾクゾクする。夢の中のアルフィーが言った
ー 「夢の中の私は、アンダインのこと、好きだった、み、みたいだよ……!」
その言葉を思い出した。
「私の事、好きなくせに」
「…………」
アルフィーが、いつも以上に冷たい視線をアンダインに送った。魚人は「しまった」と口をつぐむ。アルフィーが本当に拗ねて怒ったら、大変なことになるのだ。別に彼女が暴れて誰の手にも負えなくなる、なんてことになるわけではない。アンダインが謝り倒して、泣いて懇願するまで口をきいてくれなくなってしまう。
「ご、ごめん。アルフィー。怒らないで」
アルフィーは黙ったまま目を閉じた。アンダインが一番恐れているものは、夢の中の自分も一緒だった。アルフィーの命、愛、そして感心だ。
青い瞳に自分が映らなくなってしまう。アルフィーの愛らしい声を聴かせてもらえなくなってしまう。それを怖れた魚人は飛び起きてアルフィーの足に頬擦りしながら何度も謝った。
FIN
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